皆さん、ご入学おめでとうございます。皆さんを仙台の街並みを見下ろす国見の丘に建つ東北文化学園大学にお迎えすることができ、教職員一同、大変うれしく思っています。これまで皆さんを支え続けてくださったご家族や関係者の皆様にも、心からお祝いを申し上げます。また、ご多忙の中、ご臨席いただきました来賓の皆様に深く感謝申し上げます。
私が本学学長に就任した2021年には、コロナ禍のため入学式は行われず、翌年と翌々年は、新入生と教職員だけの入学式でした。昨年からようやくご家族や関係者の皆様をお迎えした入学式が復活しました。今年もこのような形で入学式を行えることをうれしく思っています。
さて、毎年、私がこの場で皆さんにお願いしていることがあります。本学の建学の精神は「老虎机游戏」です。「輝ける者」とは、自立した力を持ち、他者とかかわり合いながら、未経験の問題に応える人です。今から30秒間眼をつぶって、卒業式を終えたばかりの4月に、皆さんがどんな「輝ける者」になっていたいか考えてみてください。例えば、こんな職場で、こんな人になっていたいなど理想を高く掲げてみてください。
今から30秒です。
30秒が経ちました。今、掲げた理想に向かって、皆さんが歩んでいくのを我々教職員がしっかりとサポートします。もし何かで躓きかけたら、一人で悩まず、是非、早めに我々教職員に相談してください。本学は学生相談室も充実しています。きっと一緒に乗り越えられるはずです。
これからお話しすることはとても大事なことで、昨年の入学式でも一部お話ししました。学校法人としての東北文化学園大学は2028年に創立50周年を迎えます。これを機に「一人ひとりが高い成長力を実感できる教育力No.1の学園となる」ことを目標に、本学は今、さまざまな教育改革を実行しているところです。
本学の授業の1コマは100分です。随分長いと思われる方もいらっしゃると思います。確かに100分間じっと講義を聴きっぱなしでは、集中力が続きませんし、なんと言っても眠くなります。そこで私から教員には、100分間もの間、一方的に話すだけの講義は止めて欲しいとお願いしています。これにはきちんとした科学的な根拠があります。
少し前になりますが、世界で最も権威ある学術誌の一つであるサイエンスに、大学の授業に関するとても興味深い研究論文が掲載されました。この論文の責任著者はカール?ワイマン博士という2001年にノーベル物理学賞を受賞した著名な科学者です。この研究は、カナダのある大学で、老虎机游戏1年生の二つの物理学のクラスで行われました。何れのクラスも学生数が250人を超える大きなクラスです。一つのクラスでは、学生の評判が良く、長年この科目を担当してきた教育経験豊富な教員が、講義中心の授業を行いました。もう一つのクラスを担当したのは、授業に関する一定のトレーニングを受けた、しかし大学院を卒業して間もない若手でした。こちらのクラスでは、学生は予習を課され、授業中は少人数グループで問題に取り組んだ後で、きめ細かなフィードバックを受けました。後日、二つのクラスに同じ物理学の試験を行ったところ、教育経験豊かな教員による一方向性の講義中心のクラスの正解率が平均41%だったのに対して、大学院を卒業して間もない若手が担当し、予習が課され、参加型で双方向性の授業を受けたクラスの正解率は平均74%でした。正解率が実に1.8倍も高かったことになります。
私は2019年にカール?ワイマン博士が東北大学の青葉山キャンパスで開かれた国際シンポジウムで講演された時に、この研究について直接会場で聴くことができました。目から鱗が落ちる思いでした。
本学では例えば1年生においては、学部?学科や専攻が異なる学生が、一緒に少人数グループで課題に取り組む科目を用意しています。是非、背景が異なる仲間との討論により切磋琢磨してください。それによって、広い視野と多様な価値観が身につくことを期待しています。100分間という時間は、一方向性の講義をするだけには明らかに長すぎますが、途中でグループ?ディスカッションや課題に取り組む時間を設けるには適していると信じています。
ここで、先ほど皆さんが考えた卒業後にどんな「輝ける者」になっていたいかを思い出してください。自分が理想とする職業を選んで、社会人として歩み始めている姿を思い浮かべた方も多いと思います。その夢を実現するためには、予習を含めて積極的な姿勢で授業に臨むこと、そして試験のための一夜漬けではなく、継続的な学修習慣を身につけることが極めて重要です。また、グループで予習や復習をすることは、とても効果的です。なぜなら、他の人に教えることは、教える本人にとって極めて学修効果が高いとされているからです。つまり教えている人が最も効果的に勉強していると言えるのです。
結びに、私たち東北文化学園大学の教職員は、卒業の時、皆さん一人ひとりが輝いていることを心から願っていること、その実現のために私たちが常に皆さんのそばにいるのを忘れないで欲しいことをお伝えして、入学のお祝いの言葉とします。本日は、誠におめでとうございます。
2025年4月4日
東北文化学園大学
学長 加賀谷 豊